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OracleのBPM戦略とロードマップ

2008年9月21日~25日、サンフランシスコで開催されたOracle Open World 2008でBEA買収後のOracle社のBPM戦略とロードマップが紹介されたそうだ。

2008年9月26日のブルースシルバーBPMS Watchブログに「Oracle BPM Roadmap」と題してその内容が投稿されていたので私見を交えて紹介したい。

記事要約:

昨日のOracle Open World で、業界アナリストしてBEA買収後のOracle社のBPM戦略とロードマップをよく拝聴できる機会を得た。総じて、Oracleはソフトウエアの買収を正しい方向で進めているとの印象を得た。BPMは、Oracleがソフトウエア買収の都度、主張している”相互運用、統合、一体化”の道を進んでいる。

OracleのBPMソリューションはBEA買収以前、SOA Suite(具体的にはBPEL Process Managerのこと)と(ARISを再ブランド化した)BPA Suiteから構成され、一方のBEAにはAquaLogicBPMがあった。現在は(AquaLogic BPMを再ブランド化した)Oracle BPMとBPEL Process Managerの双方で構成するOracle BPM Suiteに生まれ変わっている(この件の概要については、以前のブログ「OracleがBEAのBPM製品との統合計画を発表」で紹介済み)。 Oracleは、Oracle BPMとBPEL ProcessManagerのいずれかで設計したサブプロセスを相互に呼び出せる” 相互運用”をサポートするという(IBMはWebSphereとFileNetの統合に1年を費やしたのに対しOracleは100日以内でやり遂げており、大変な作業ではなかったようだ)。BPA Suiteは未だ存在するが、”エンタープライズモデリング”と呼び上位のEAソリューションに位置づけた。

興味深いのは、来年リリース予定の11gにBPMSプラットフォームを一体化するという計画である。BPM SuiteはBPEL Process ManagerとOracle BPMの双方を提供する。それは共通のランタイムエンジンで異なる設計環境を持つことになる。実行可能言語(Executable Design Language)の1つがBPEL 2.0で、他方がBPMN 2.0(XPDLでインポートされる)となる。BPM Studio (フルBPMNベースのAquaLogic BPMの設計環境)は、JDeveloper上で稼働し、JDeveloperはビジネスとITの視点分離をサポートできるよう拡張されるようだ。Oracle BPMとBPEL Process Managerの両方は、WS-HumanTaskとBPEL4Peopleをベースとした同じヒューマンタスクサービスを、さらに同じルールデザイナーとエンジン(SOA Suiteに旧来からあった機能)を使用する。


Oracle BPM

こうなると、2つの設計環境を提供することは 、単一のBPMプラットフォームでBPMN 2.0とBPEL 2.0の設計スタイルを自由に選択できるようになり、 いずれの設計スタイルでもヒューマンタスクとルールなどで構成される人中心のビジネスプロセスは、共通のプロセスポータル(※1)や共通のBAM/BIレイヤー、共通のBPMサーバー(※2)、およびすべてのランタイムコンポーネントの統合管理コンソールとなるEnterprise Managerを共有できる。

  • ※1:プロセスポータル: Oracle WebCenter上に構築されたWeb2.0フレームワークにAquaLogic BPMのコラボレーションエディションコンポーネントを追加したもの
  • ※2:BPMサーバー: SCA, WebLogic Server, JRockit JVM, Oracle Application Grid, Coherence distributed chachingに基づいて作りあげられている

もうひとつ忘れてならないことは、BPM Studioはモデリング/設計コンポーネントのすべての依存関係マップを自動的に作成するエンタープライズリポジトリで統合されることである。これらのすべては来年の今頃に実現するようだ。なお、すべてのOracle製品と同様に設計ツールと開発ランタイムは無償で、ライセンスキーは存在しない。

製品完成まで1年の猶予があるが、一方のIBMやTIBCOはそれぞれ、BPMS一体化作業をゆっくり、着実に進めており、スコープとスピードの両面でOracleの計画は両社を圧倒している。

私見:

2つの設計環境とは?

BPMN 2.0とBPEL 2.0の設計スタイルを自由に選択できるようになり、いずれかで設計したサブプロセスを相互に呼び出せる”相互運用”をサポートするという構想は、以前から私が求めてきた理想のBPMS機能要件である。次の図をご覧いただきたい。


ハイブリッド

BPMの実行環境を構築するには、どうしてもヒューマンセントリック(人中心)のビジネスプロセスとインテグレーションセントリックのシステム統合基盤(SOA/ESB)の両実行エンジンがそれぞれの設計環境とともに必要になると考えていた。これまでは、BPM専門ベンダはヒューマンセントリック部のプラットフォーム、SOAベンダはインテグレーションセントリック部のプラットフォームを個別に提供してきた。ユーザー企業にとって、これらベンダの異なる2種類のプロセス実行エンジンと設計環境を同時に導入するには、コストとサポートの両面で足かせとなり、 「ビジネスとITの融合」という BPM導入の理想と現実には、BPM技術の点で未だギャップがあると感じていた。OracleがBEAを買収する話が浮上した際、私の頭によぎったのは、Oracleさんはこの図を実現するのでは? との期待であった。 「単一のBPMプラットフォームでBPMN 2.0とBPEL 2.0の設計スタイルを自由に選択できる」という構想を打ち出したOracle社に「やったね!Oracleさん」と称賛を送りたい。

サブプロセスを相互に呼び出せる”相互運用”が意味するもの

この”相互運用”は、ヒューマンセントリック・プロセス(人中心の業務)からインテグレーションセントリック・プロセス(ビジネスサービスコンポーネント)を呼び出すだけではないだろう。システムサイドから業務プロセスを起動することも可能となる。具体的には、滞留している業務プロセスをシステムサイドで常時監視し、問題となる業務処理の解決プロセスを起動させ担当業務管理者にその対応を促すようなイベントドリブンなプロセス起動が容易に実現できると思われる。Oracle構想のBPMサーバーには、”Business Rules”が実装されている。この構想図の背景には、ビジネスルールエンジンがプロセスの状況を適切に判断しプロセス起動させる仕掛けが用意されると予想する。また、BPMNの考え方にあるサブプロセスの再利用(プロセスの部品化)もサポートされるであろう。

BPMN2.0をビジネスプロセスモデリングの中核に据える

現在、OMGではBPMN2.0の策定を進めており、IBM,SAP, Oracleがこの標準化作業に深く関わっている。BPMN2.0ではイベントハンドリングに関する表記強化が検討されており、標準化作業と並行していち早くその最新仕様が製品に実装されていくものと予想される。

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